貧困、虐待、不登校。「支援者」に頼るのが難しい構造と地域の中に戻る子どもたち。
子どもが孤立してしまう構造的な課題
貧困、虐待、不登校など、子どもたちの周りにある社会課題の背景には、子どもの心の孤立があります。子どもの心の孤立とは、安全に頼れる誰かがいない環境で、他者や社会への信頼を失っていく状態です。
この子どもの心の孤立の背景には、いわゆる支援機関や学校など、子どもをサポートする主な担い手の逼迫化があります。
例えば都内の児童相談所では、一人のワーカーが100人以上の子どもを担当している状況が生じていたり、不登校や発達障害、養育の難しい家庭が利用する児童精神科の病院では、初診までに3か月~6か月を要するという状況も常態化しているのが現状です。
地域の中に戻る子どもたち
年々児童相談所への相談は増えています。
相談対応件数 103,286件
一時保護 17,801件
施設や里親 4570件
98,716件(保護されなかったり、一時保護されてまた家に戻る)
児童虐待相談対応件数のうちの約96%の子どもたちが、親子分離をせずに在宅で過ごしています。このように児童相談所に電話しても、保護されず、まちにいる子どもたちが地域で生活をしています。*1(データ参考:H29/2/1 第5回子ども家庭福祉人材の専門確保WG資料「児童相談所の現状」より)
もちろん中には虐待ではなかったり、非常に軽微な場合と判断されたものも含まれます。ですが、それはあくまで大人側が判断したということに過ぎず、そこにはリスクのグラデーションが存在します。そして、そのリスクがエスカレートしないように予防することが必要となってきます。
子どもたちが生きる地域に、信頼できる市民を増やす
子どもの育ちにとって大切な、信頼できる他者の存在。たとえ心に小さなケガをしたとしても、その傷口が広がる前に癒し合える仲間の存在。そんな存在が地域や社会の中に生まれ続けていくための仕組みや文化を築いていくことが必要です。
子どもたちの育ちを支えるのは、専門的なサポートだけではありません。
誰かに話をしたり話を聞いてもらったり、一緒に遊んだり、勉強したり。そんな日常を過ごす関係性の中にほっとできる安心感や、頼り頼られるという信頼感を積み重ねていくことが大切なのです。