そこにいるだけでいい〜みんなのあいまいな居間を地元に〜
まちの中にはさまざまな場所があります。学校、市役所、コンビニ、駄菓子屋、カフェ。役割を持った場所もあれば、一見役割があるけれどそれを超えたやりとりや雰囲気が生まれる場所もあります。
今回はそんな場所をHIPAHIPAスポットと呼び、全国で一斉にHIPAHIPAスポットを開くイベント「HIPAHIPA week」の一環として、地域での実践のお話を聞きました。
今回お話を聞いたのは愛知県名古屋市で「地域共生リビングaimaima~あいまいま〜」を立ち上げようとしているしげちゃんです。しげちゃんはPIECESが行っているプログラムCitizenship for Children(CforC) 2021年の修了生です。保育士として働きながら、親子コミュニティasobi基地の愛知県リーダーとして活動をしています。このGWに「地域共生リビングaimaima~あいまいま〜」を立ち上げることになりました。
変わったキャリアを歩んでいる保育士?!
しげちゃんは保育園を2園掛け持ちで働きながら、asobi基地の愛知県リーダーをしています。そうしたキャリアはどのように生まれてきたのでしょうか。
高校生の時は建築科に行こうと思っていたしげちゃんですが、高3の夏の三者面談の頃、自分の道を選んでないと気づき、本当に何が好きなのか、何をやりたいのか考え始めました。そこで、保育士という職業は他の職業にない子どもの一番大事な時を共有できると気づいたそう。その気づきに至る背景には、急に学校に行けなくなったり引きこもったりして苦しんでいる人たちが周りにいたという経験がありました。その経験を踏まえ、苦しんでしまう前の段階でアプローチできるのは保育士か幼稚園の先生ではないかと考えたそうです。
そうして保育士として働き始めましたが、当時勤めていた保育園で「もっと子どもが遊びを深めたり、一緒に創り上げることができるのではないか」とモヤモヤを感じていました。そんなときに、asobi基地に出会います。しげちゃんが持つ保育観と、子どもと過ごす時の距離感、居心地の良さがリンクし、「これは絶対に自分でやろう!」と思い、asobi基地を愛知県でやるために、直談判をしたそうです。
そんなasobi基地の愛知県のリーダーも行うしげちゃんが、2つの保育園を掛け持ちするようになったのはここ数年のことです。掛け持ちを始めた理由は、長く保育士をやるために複数の保育園にいた方がいろんな経験を積めるということ、そして自分の子どもの子育てにもっと向き合うために時間調整がしやすいパートタイムに変更したいということがあったそうです。正職員からパートとして掛け持ちする働き方に変え、時間をうまく使い、お金の面など家族の理解を得ながら、保育や育児などやりたいことをやっていくスタイルを2年続けているそうです。
遊びを通して勝手に生まれる人との輪
「もともと子どもだったぼくたちは人と繋がるスキルを持っているんじゃないか」としげちゃんはいいます。実際に、子どもたちが公園で初めて出会った人(子ども)と半日遊んでいると”親戚のお兄ちゃん”と遊んでいるような距離感が生まれてくることがあるそう。それはきっと大人も子どもも変わらず、遊びを通して勝手に生まれる人との輪があるのではないかと感じているしげちゃんは、「それは保育でも子育てでも、社会でも生かせることなのではないか」と気づいたそうです。
aimaimaという居場所
aimaimaを作ろうとした理由を尋ねると、asobi基地の活動は楽しく、自分の居場所にもなっているが、asobi基地は愛知県のいろんな場所で活動しているため、自分の住んでいる地域に根ざした活動とは言いづらいそうです。
自分の子育てを通して、しげちゃんのお子さんやその周りの子たち、地域の子たちにできることがあるんじゃないかと思い、地域共生リビングaimaimaを作ろうと考えたそうです。しげちゃんが借りれるマンションの一室を、マンションの住民だけでなく子どもや大人、いろんな人たちが居間のように、でも誰の「居間」でもなくみんなそれぞれ過ごしやすいような「あいまいな空間」の居間にしようとしているということでした。
「居間」というコンセプトには、大人も子どももいていろんな人がごちゃごちゃに入れるような間という思いが込められています。居間というと、例えば家族だと、大人や子どもたちがお互いに刺激し合うときもあれば、同じ居間に集まってなにかをやったりやらなかったり、くつろいでいるというイメージがあります。そんな居間が家族単位だけではなく、マンションの一室から徐々に地域に広げ、俯瞰して見た時に地域の居間ができていたらいいと考えているということでした。
今度の5/5のイベントのときは集まってくれた子どもたちや大人、地域の人たちにどういう間がいいかヒアリングしてみようかなと考えているそうです。
むすびに
なにもしてもしなくてもただそこにいるだけでいい、ということを大切にしたいしげちゃん。例えばasobi基地に来てくれたお父さんお母さんは「遊ばせる」という選択を子どもに示すけれど、自分は「一緒に遊びましょう」というスタンスでいる。でも遊ばないといけないわけでもなく、子どもが遊ばない、遊びたくないならそれでもいいし、お父さんお母さんも遊ばない選択をしたら見ているだけでもいい。強制をしてしまったらそれは「居間」のような居心地のいい空間ではなくなるかな、としげちゃんはいいます。かつてasbi基地で感じた心地いい居場所ーそこにいるだけでいいんだよ、というメッセージを込めた居間、いろんな人がふらりとくつろげるような居間がしげちゃんの地元にもうすぐ生まれようとしています。
執筆:しょうこ(ひつじ)
編集:くりちゃん