子どもにとって「ありたい自分」になるために 〜願いや価値観に向き合うワーク〜

Photo by cheemamericco

「なりたい自分」はありますか?
子どもに何か関わりたいと思う人であれば、地域のお節介おばちゃん的な自分、寄り添いながらただ話を聞いてあげる自分、良くないことをしたときは厳しく叱ってあげられる自分など、人によって様々な「なりたい自分」がいると思います。

しかしその一方で、「なりたい自分」とは、気付かずに「違う自分」になっていることもあります。今回は、「なりたい私」を阻害する「もう1人の私」について考えてみます。

私たちはみんな経験や価値観から生まれたメガネを持っている

私たちは自分の経験や価値観から、「なりたい自分」を思い描いていきます。「大人から一方的に決めつけられて怒られた」という人は、できるだけ子どもの話を聞いてあげようとしたり、「一人でいることが寂しかった」という人は、一人でいる人に積極的に話しかけようとしたりするかもしれません。

その経験や価値観は、なりたい自分を思い描くだけでなく、他者の行動の意図や考えを想像する時にも使われます。例えば、一人でいる子どもを見た時に、「ひとりぼっちで寂しそうだ」と思う人もいれば、「1人の時間を楽しんでいるんだな」と思う人もいます。

自分が無意識に持つ価値観や願いに出会う

私たちが行うプログラムCitizenship for Children(CforC)では、「子どもに関わりたい」と思う一般市民の方向けに、子どもと自分と地域にとってより良い関わり方について探求していきます。

CforCでは、ワークの1つとして、リフレクションを行います。
リフレクションでは、自分自身が持っている「願い」や「価値観(価値規範)」とその源泉(これまでの経験など)を探求していきます。

具体的には、子どもとのやりとりについて振り返っていきます。「あの関わりでよかったのかな」「何気ないやりとりだったけど、少し気になったな」というやりとりについて、子どもや自分の言動から、背景にはどんな価値観があるのか、その時の感情はどうだったのか、など問いを投げかけて深めていきます。

「自己覚知」から相手も自分も大切にする

こうした自分の感じ方、考え方の傾向などを自ら把握することを「自己覚知」といいます。自己覚知ができないと、自分が持っている価値観を無意識に相手に押し付けてしまったり、感情に振り回されてしんどくなってしまいます。

その一方で、自己覚知ができていると、自分の価値観とは区別して相手に必要なことを考えられたり、自分の心の安全を保つことができたり、結果として相手も自分も大切にすることができます。

相手も自分も大切にする。そのために、自分の感情や無意識に持っている価値観を知ることが大切になってきます。

今回はCforCのみつめるコース(基礎コース)で、実際にリフレクションワークを受けた2名の参加者から感想をいただきました。参加者目線からどんなふうに感じたのか、ぜひご覧ください。


参加者の声

asamiさん
子どもとの「対等な関係」は学生のときから、私のテーマでした。でも、実際に現場で子ども(や親子)と関わっていると「この子を何とかしてあげたい」「ありがとうって言われることが嬉しい(言われたい)」という思いが、私の心の中にずっとありました。それは「そうじゃない」ってわかっているけど、どうしても拭えない思いでした。

これまでも、現場で「振り返り」をすることは多々ありましたが、それはみんなで「意見や想いを出し合って、あぁでもない、こうでもない」と議論するような場で、今回のリフレクションとは違っていたように思います。

今回のリフレクションで「ただ聴いてもらう」それだけなのに「自分の頭が整理されて、変化が起きる」という経験をしました。このとき、否定されたらもちろん辛かったし、アドバイスをもらっても自分の考えが否定されたような気がして辛かったんじゃないかと思います。

日々そんな思いをしている子どもがいるのではないか?「相手の持っている力を信じて待つ」ことの大切さがリフレクションを通して、スっと心に入ってきました。講座の山下さんのお話や言葉は、とても「貴重」で「大切」なものでした。そんなお話や言葉を、自分の経験や想いと照らし合わせて落とし込んでいく。そんな感覚を大切にしていきたいです。

はんちゃん
「今仕事としている支援者という立場から離れて、子どもたちとの向き合い方を見つめなおしたい」そんな気持ちから参加した今回のプログラム。日々がせわしなく流れていく中で、月に一度自分自身と向き合える大切な時間になっています。

ゼミの中で行われた自己覚知ワークでは、同じグループの方の考え方の背景や価値観が分かるのが楽しく、それを共有した後の空間は何だか安心できるなと感じました。私自身も、このワークを通して「自分から生きづらさを他人に伝えるのが難しい子どもたちに寄り添える人でありたい」という大事にしていた価値観を思い出し、言語化することができました。

また、第2回の講座では「こころでこたえる」をキーワードに、みなさんの原体験に触れる貴重な時間でした。「こころでこたえる」ってなんだろう。そんな問いがまだ残っています。しかし、この言葉の意味を考える中で、子どもとのかかわりは一方通行ではなく、お互いの対話があってこそだという当たり前のように見えて、見落としがちなことを再認識できました。


感情を見つめなおすのはエネルギーが必要

リフレクションを行うと、自分の子どもの頃の経験にまで遡る人もいます。そして、その時に感じた感情を抱きしめたいと思う人もいれば、まだ蓋をしておきたいと思う人もいます。

リフレクションを行うときに、PIECESでお伝えしていることがあります。それは、「大人になって自分の感情を見つめなおすのはエネルギーが必要」だということです。私たちは大人になるにつれて、感情をコントロールしていきます。だからこそ、自分の中のマイナスの感情をみつめることは、とてもエネルギーがいるのです。

だからこそ、感情の蓋を開けることが怖い時は無理に開けなくても大丈夫ですし、感情が出てきた時は、自分を十分に褒めて労ってあげたりしてください。

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